兵庫県赤穂市で5月11日に発生した大規模な山火事は、約70ヘクタール(東京ドーム15個分)の山林を燃やした。一時、付近の住民が避難したり、高速道路が通行止めになったりと、大騒ぎになった。翌12日、バーベキューの炭を山に捨てたとして、会社員男性(40歳)が森林法違反(森林失火)の容疑で兵庫県警に逮捕された。
報道によると、男性は11日昼、自宅の庭で家族らとバーベキューをした。残った炭を「消えたと思いこんで水をかけず、裏山に捨てた」と容疑を認めている。自宅に入ってから、炎が上がっていることに気づき、男性の家族が119番したという。
さて、今回の山火事でクローズアップされた「森林失火」というのは、あまり聞き慣れない言葉だが、そもそもどういう犯罪になのだろうか。刑事事件にくわしい星野学弁護士に聞いた。
●森林に対する放火や失火は「森林法」で処罰される
「火事を起こすという犯罪は、大きくいうと2種類に分かれます。わざと火を放つ場合の『放火罪』と、不始末の場合の『失火罪』です」
このように星野弁護士は説明する。
「山火事は、木材の焼失という経済的被害だけでなく、保安林の役割を失わせたり周囲の人々にも不安を与える危険なものですから、山火事を起こした人の責任は重く、刑事処罰の必要性は大きいといえます。
そのため、森林に対する放火・失火は、森林の保護などを目的とする『森林法』という特別法で処罰されることになっています」
森林に対する放火・失火は、刑法とは違う法律で、処罰されることになるようだ。この森林法に規定されている「森林失火」という犯罪は、どんな風に定められているのだろうか。
「まず、失火によって、他人の森林を焼いた場合には、この森林失火として処罰の対象となります。
また、失火で焼いたのが自分の所有する森林でも、それによって『公共の危険を生じさせた』場合は、やはり森林失火となり得ます。
法定刑はどちらも50万円以下の罰金です」
●森林法は「意外と身近な法律」
森林失火になるような場合、一般的に「逮捕」されてしまうものなのだろうか。
「それはケースバイケースです。おそらく本件では、火の始末の仕方がずさんであり、生じた山火事の規模も大きく危険性が大きかったとして、『逮捕』という重大な結果になったのではないでしょうか」
星野弁護士は「なお、森林法は、日本の国土の約7割を占めるとされる森林だけでなく、木々・竹が集まって生えているところも『森林』として取り扱います。したがって、ニュースで取り上げられる大規模な森林火災から『林』や『藪(やぶ)』程度の火災も処罰の対象となります。そのため、森林法は意外と身近な法律だといえます」と話していた。