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都知事選で出現した「Rシール」、蓮舫氏陣営「無関係、原状回復して」と訴え 勝手に剥がしても平気?
街中にあった「Rシール」(2024年7月10日、都内、弁護士ドットコムニュース撮影)

都知事選で出現した「Rシール」、蓮舫氏陣営「無関係、原状回復して」と訴え 勝手に剥がしても平気?

東京都知事選の選挙期間中、都心部の繁華街などで「R」と書かれたシールが大量に貼られたとして、注目が集まっている。

弁護士ドットコムニュースが7月10日時点で新宿駅周辺で調査したところ、電柱やガードレール等を中心に複数貼られているのを確認できた。選挙中だけ貼ったというわけではなさそうだ。

この「R」をめぐっては、都民ファーストの会所属の都議がSNSで「蓮舫さん陣営は、街中に貼りまくった『R』のシールを早急に剥がしてください」と投稿するなどネットで話題となっていた。

蓮舫氏は、「R」がプリントされたシャツを着て選挙活動をしていたこともあり、「R=蓮舫」という認識が広まったとみられる。ただし、着ていたシャツの「R」は黒色だったが、シールの「R」は白色で、まったく同じ文字ではない。

騒動を受けて、蓮舫氏の秘書が運営するとみられるXのアカウントが7月11日、「Rシール」について、「蓮舫陣営として、このシールの企画・作成・配布・貼付のいずれにもまったく関わっておらず、本件についてはSNSなどで知ったところ」との投稿。「貼りつけをおこなった方は、候補者への支援の思いからだったとしても、すぐに原状回復をされるようにお願い申し上げます」と呼びかけた。

誰がシールを配り、貼ったのかは詳細不明だが、街中の電柱などに勝手にシールを貼って法的に問題ないのだろうか。また、原状回復の“お手伝い”をしようと第三者が勝手に貼られたシールを剥がしても大丈夫なのだろうか。刑事事件に詳しい澤井康生弁護士に聞いた。

●善意でシールを剥がしても「事実上は問題ないのでは」

──街中の電柱や看板などに勝手にシールを貼るのは問題ないのでしょうか。

他人の私有財産である看板等にシールを貼った場合は、器物損壊罪(刑法261条、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料)に該当する可能性があります。

シールをたくさん貼ることにより店名を見えなくするなどして看板としての効用を喪失させた場合には器物損壊罪が成立します。

また、器物損壊とはならないような場合でも、「みだりに他人の家屋その他の工作物にはり札をし、若しくは他人の看板、禁札その他の標示物を取り除き、又はこれらの工作物若しくは標示物を汚した」といえる場合には軽犯罪法違反(1条33号、拘留または科料)が成立する可能性もあります。

──もし道路標識などにシールが貼られていた場合はどうでしょうか。

都道府県公安委員会が設置した道路標識にたくさんのシールを貼って標識を見えなくしてしまった場合は、道路交通法違反が成立する可能性もあります。  

同法115条は、「公安委員会が設置した道路標識、信号機や道路標示を損壊して道路における交通の危険を生じさせた場合、5年以下の懲役または20万円以下の罰金に処する」と規定しています。

シールを標識一面に貼って読めなくしてしまい、標識としての効用を喪失させ、これによって道路における交通の危険を生じさせた場合には同法違反に該当する可能性があります。

また、東京都には屋外広告物条例があり、道路標識、信号機、ガードレール、街路樹等に広告物を表示してはならないと規定されています(同条例7条1項)。

シールをこれらの対象物に貼った場合には同条例違反が成立する可能性もあります。この場合は30万円以下の罰金です(同条例68条1号)。

──勝手に貼られたシールを剥がしたらマズいのでしょうか。

私有財産である看板などに勝手に貼られたシールをはがすのは器物損壊罪や軽犯罪法違反によって受けた被害を回復する措置といえます。

この点、勝手に貼られたシールは同違反の立派な証拠ですから、理論上は証拠隠滅罪(刑法104条)に該当する可能性があります。

しかしながら、被害者が被害を回復するために取った措置が証拠隠滅罪で立件されるなど聞いたことがないので、事実上は問題ないと思います。一応、念のため写真や動画などで証拠を残しておいた方がよいでしょう。

プロフィール

澤井 康生
澤井 康生(さわい やすお)弁護士 秋法律事務所
警察官僚出身で警視庁刑事としての経験も有する。ファイナンスMBAを取得し、企業法務、一般民事事件、家事事件、刑事事件などを手がける傍ら東京簡易裁判所の非常勤裁判官、東京税理士会のインハウスロイヤー(非常勤)も歴任、公認不正検査士試験や金融コンプライアンスオフィサー1級試験にも合格、企業不祥事が起きた場合の第三者委員会の経験も豊富、その他各新聞での有識者コメント、テレビ・ラジオ等の出演も多く幅広い分野で活躍。陸上自衛隊予備自衛官(3等陸佐、少佐相当官)の資格も有する。現在、早稲田大学法学研究科博士後期課程在学中(刑事法専攻)。朝日新聞社ウェブサイトtelling「HELP ME 弁護士センセイ」連載。楽天証券ウェブサイト「トウシル」連載。毎月ラジオNIKKEIにもゲスト出演中。新宿区西早稲田の秋法律事務所のパートナー弁護士。代表著書「捜査本部というすごい仕組み」(マイナビ新書)など。

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