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エアガン撃ったら違法? 被害に悩む人たちの声も「上司に足を撃たれた」「外壁やベランダを」
写真はイメージ(Boy_Anupong / PIXTA)

エアガン撃ったら違法? 被害に悩む人たちの声も「上司に足を撃たれた」「外壁やベランダを」

東京都江戸川区にあるJR平井駅のホームにいた人に対して自宅からエアガンで繰り返し撃ったとして、大学生(24)が8月2日、警視庁に暴力行為法違反(常習的暴行)の疑いで逮捕された。

報道によると、電車を待っていた30代女性や60代男性にエアガンを撃ち、背中や肩などにBB弾を当てた疑いがある。けがはなかったという。

大学生の家は駅のホームから約40メートル離れた場所にあるマンションで、ベランダなどから隠れて撃っていたとみられる。

エアガンを使った事件はこれまでも発生している。最近では今年4、5月、前橋市の公園で遊んでいた9歳と15歳の男の子がエアガンで撃たれ、背中や頭に軽いけがをする事件があった。

弁護士ドットコムにもエアガンをめぐるトラブルの相談が寄せられている。

ある相談者は「会社の上司で、仕事を失敗した時などにエアガンで足を撃ってくる人がいる」。

また別の相談者は「向かいのマンションに住む男性からエアガンで家の外壁やベランダを撃たれている」と恐怖に怯えている。

このように人にエアガンを撃つ行為はどのような法的問題があるのか。また、所持や使用する際は何に気をつけるべきか。

刑事事件に詳しい澤井康生弁護士に聞いた。

画像タイトル JR平井駅(Gengorou / PIXTA)

●暴行罪や傷害罪が成立する可能性

ーーエアガンを使う場合、どんな問題が生じる?

エアガンで人を撃った場合、被害者がケガをした場合には傷害罪(刑法204条)が成立し、15年以下の懲役または50万円以下の罰金となります。

被害者がケガをしなかった場合であっても、暴行罪(刑法208条)が成立し、2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料となります。

今回の事件では、被疑者がエアガンで人を撃つ行為を繰り返していたことから、単なる刑法上の暴行罪ではなく、より刑の重い特別法の暴力行為等処罰に関する法律の常習的暴行罪(同法1条の3)が適用されたものと思われます(3カ月以上5年以下の懲役)。

●銃刀法違反の可能性も

ーー他の罪に問われる可能性もある?

まず、不法所持罪について説明します。

銃刀法では「銃砲」の所持が禁止されています。ここで銃砲とは、拳銃や小銃、機関銃、猟銃などが該当しますが、これに加えて弾丸の運動エネルギーの値が人の生命に危険を及ぼす空気銃(法律上のエアガン)も該当します(銃刀法2条1項)。

また、弾丸を発射できる銃で、人の生命には危険を及ぼさないけれど、人を傷害しうるものは「準空気銃」として所持が禁止されています(銃刀法第21条の3)。

従来、殺傷能力のある空気銃に該当しないエアガンは銃刀法では規制されていませんでしたが、平成18年の法改正により、人を傷害しうる一定の基準以上の威力があるエアガンは「準空気銃」として所持が禁止されました。

画像タイトル 写真はイメージ(じろきち / PIXTA)

ちなみに、もともとは準空気銃にあたらないエアガン(ソフトエアガン)を購入した場合であっても、改造によって威力を上げてしまうと「準空気銃」として規制の対象となる可能性があります。

したがって、殺傷能力のある空気銃を所持すると銃刀法違反となり、3年以下の懲役または50万円以下の罰金となります(銃刀法31条の16)。

また、人を傷害しうる威力のある準空気銃を所持すると同様に銃刀法違反となり、1年以下の懲役または30万円以下の罰金となります(銃刀法32条)。

次に、発射罪についてです。

銃刀法では公共の空間において拳銃等を発射することが禁止されていましたが、昨今の凶悪事件を契機として、今年の法改正により、拳銃等以外の銃砲等、すなわち殺傷能力のある空気銃を発射することも禁止されました(銃刀法3条の13)。

これに違反した場合には無期または3年以上の有期懲役となります(銃刀法31条)。

そして、空気銃を違法に所持した者が公共の空間において違法に発射した場合には所持罪と発射罪の両方が成立し、併合罪となるのでさらに罪が重くなります。

●建物に撃つ行為も犯罪の恐れ

ーー自宅の向かいにあるマンションに向かって発射する行為はどんな問題がある?

住居に発砲されて建物の一部が損壊した場合には建造物損壊罪が成立し、5年以下の懲役となります(刑法260条)。

建物自体を損壊しなくても、窓ガラスなどを損壊した場合には器物損壊罪が成立し(刑法261条)、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料となります。

画像タイトル 写真はイメージ(enterFrame / PIXTA)

また、すでに述べたとおり被害者が被弾してケガをした場合には傷害罪が、ケガをしなくても暴行罪が成立する可能性があります。

さらに殺傷能力ある空気銃だった場合には公共の空間における発射罪の成立も問題となりますが、道路、公園、駅、劇場、百貨店などの公共の空間に向かって、または道路などにおいて発射することが必要なので、マンションから住居への発砲だとこれに該当しない可能性があります。

●遊ぶときは許可された場所でルールに沿って

ーー趣味でエアガンを使う場合、気をつけるべきことは?

法令を遵守したショップで適法なエアガンを購入することが必要です。

適法なエアガンであっても自分で基準値を超えた改造をすると違法な準空気銃や空気銃になってしまいます。

人に向けて打つことは絶対にやめましょう。遊ぶときはサバイバルゲーム場などの許可された場所でルールを守って遊ぶことが必要です。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

澤井 康生
澤井 康生(さわい やすお)弁護士 秋法律事務所
警察官僚出身で警視庁刑事としての経験も有する。ファイナンスMBAを取得し、企業法務、一般民事事件、家事事件、刑事事件などを手がける傍ら東京簡易裁判所の非常勤裁判官、東京税理士会のインハウスロイヤー(非常勤)も歴任、公認不正検査士試験や金融コンプライアンスオフィサー1級試験にも合格、企業不祥事が起きた場合の第三者委員会の経験も豊富、その他各新聞での有識者コメント、テレビ・ラジオ等の出演も多く幅広い分野で活躍。陸上自衛隊予備自衛官(2等陸佐、中佐相当官)の資格も有する。現在、早稲田大学法学研究科博士後期課程在学中(刑事法専攻)。朝日新聞社ウェブサイトtelling「HELP ME 弁護士センセイ」連載。楽天証券ウェブサイト「トウシル」連載。毎月ラジオNIKKEIにもゲスト出演中。新宿区西早稲田の秋法律事務所のパートナー弁護士。代表著書「捜査本部というすごい仕組み」(マイナビ新書)など。

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