指定暴力団神戸山口組の本部事務所=兵庫県淡路市=について、暴力団追放兵庫県民センターが10月2日、住民に代わって使用禁止を求める仮処分を神戸地裁に申し立てた。
報道によると、暴追センターは「住民らが平穏に暮らす権利が侵害されている」として、住民に代わって当事者となる「代理訴訟」の制度を利用して申し立てすることを決めたという。
近隣住民からは「組幹部が集まる定例会で車を誘導する組員が怖い」といった声があがっていたという。この「代理訴訟」というのは、どういった制度なのだろうか。申し立てが認められれば、どうなるのか。伊田真広弁護士に聞いた。
●「代理訴訟」であれば住民の個人情報が秘匿される
「仮処分を申し立てた」ということだが、これは普通の訴訟とは違うのだろうか。
「普通の訴訟も仮処分も、裁判所の手続きである点は同じです。普通の訴訟は権利の内容を確定させる手続きであるのに対して、仮処分は暫定的な判断を下す手続きです。そのため、仮処分は訴訟に比べて短期間で結論が出ますし、今回の様に、今そこにある危険を取り除くために有効な方法です」
今回は「代理訴訟」の制度を利用するという。どういったメリットがあるのか。
「代理訴訟制度を用いない通常の訴訟、仮処分では、付近住民等が弁護士に直接委任する形になります。付近住民等→弁護士という依頼の流れです。そうすると、どうしても付近住民が矢面に立つことになってしまいます。
一方、代理訴訟制度では付近住民等がまず、適格都道府県センター(暴追センター)に委託し、適格都道府県センターが弁護士に委任する形をとります。付近住民等→適格都道府県センター→弁護士という依頼の流れです。このやり方のメリットは、付近住民等の個人情報が基本的には秘匿される、ということにあります」
●暴力団に対するインパクトは大きい
今回の申し立てで期待されることはどういった点か。
「仮処分が認められれば、組員は本部事務所を使用できなくなります。代理訴訟制度であっても、付近住民等は訴訟に関わる以上、個人情報が暴力団に明らかになってしまう可能性はゼロではありません。
さらに、今回は、神戸山口組という全国規模の暴力団の本部に関する申し立てですから、付近住民等にとって大変勇気のいる決断だったと思います。その分、暴力団に対するインパクトは大きいと思います」