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「1日1回笑う」「写真を撮る時はカニのポーズ」「大声で川口が大好きだと叫ぶ」…こんなにある全国の「ご当地条例」
写真はイメージです(ちーぼう / PIXTA)

「1日1回笑う」「写真を撮る時はカニのポーズ」「大声で川口が大好きだと叫ぶ」…こんなにある全国の「ご当地条例」

お盆休みで、地元に帰省した人も多かったのではないでしょうか。全国各地には、地方自治体が定めるさまざまな条例があります。

たとえば、山形県は2024年7月、「1日1回笑う」ことを県民に努めるよう定めた条例を制定し、注目を集めました。条例の正式名称は「山形県笑いで健康づくり推進条例」で、笑うことで健康増進や良い人間関係をつくることが目的。こうした条例は全国初といいます。

これ以外にもユニークな条例があります。大阪府泉佐野市はワタリガニの普及促進をして地域経済の活性化を目指す条例があり、市や市民は写真を撮影する際に「ワタリガニを表す姿勢」をとることなどを求めています。

また、埼玉県川口市は2023年4月、「大きな声で川口を大好きだと叫んでみませんか川口プライド条例」を施行しました。これは、「大きな声で川口を大好きだと叫びたくなるほど、川口をもっと良くしていこうとする心意気」を高めていく目的だそうです。

今回は、全国のユニークな「ご当地条例」を紹介していきたいと思います。

●お酒だけじゃない「牛乳や緑茶で乾杯」

地方自治体の条例の傾向には、特産物を推進しているものがあります。たとえば、北海道中標津町には、「牛乳で乾杯条例」と呼ばれる条例があります。町の基幹産業が酪農であることから、牛乳の消費拡大と普及継承促進をすることで、酪農文化への理解をはかる目的として、全国で初めて制定されました。条文にはこう書かれています。

「町民は、町内で行われる飲食物が提供される会食等において乾杯が行われる場合、可能な範囲において牛乳で乾杯し、その普及促進に協力するよう努めるものとする」

中標津町以外にも、栃木県那須塩原市には牛乳による地域活性化を推進する条例があり、「市民は、会食を伴う行事等の際、可能な範囲において牛乳等での乾杯に協力するものとする」とあります。同じく栃木県那須町でも、牛乳消費拡大を応援する条例があり、やはり、町民が会食する際には可能な限り、牛乳で乾杯することを努めるよう求めています。

なお、地酒や地元のビール、ワイン、ウイスキーなどで乾杯することをうながす条例は「牛乳で乾杯」条例よりも多く、全国各地でよくみられます。

また、カゴメ発祥の地である愛知県東海市では、トマトジュースで乾杯することを奨励する条例があります。お茶が名産の福岡県うきは市にも、「お開きは、うきはの茶で乾杯条例」があり、お茶で乾杯することを勧めています。静岡県掛川市も「緑茶で乾杯条例」があり、緑茶の振興をはかっています。

●おにぎりの具は「梅干し」、リンゴは「まるかじり」

特産品に関する条例はまだまだあります。注目を集めてきた一つが、和歌山県みなべ町の通称「梅干しおにぎり条例」です。「日本一の梅の町」を自負するみなべ町は、町民がおにぎりをつくる際、具に梅干しを入れることを推奨しています。

リンゴの名産地である青森県には、リンゴに関する条例がたくさんあります。たとえば、板柳町にはリンゴをまるかじり普及に努める「りんごまるかじり条例」があります。弘前市には、「りんごを食べる日を定める条例」があり、毎月5日はりんごを食べる日となっています。

ミカンが特産品の愛媛県伊方町には、「みかんジュース蛇口貸出要項」が定められています。その名の通り、ミカンジュースが出る蛇口を無料で貸し出してくれるというものです。ただし、使用するジュースは、伊方町産100%、もしくは愛媛県産100%でなければなりません。

三重県名張市には「『食べてだあこ』名張のお菓子でおもてなし条例」があります。「食べてだあこ」とは、地元の言葉で「食べてください」という意味だそうです。名張市は古くから伊勢神宮への宿場町として栄えており、お茶菓子で旅人をもてなしていたことから、そうした文化を次世代に伝えていくことを目的に、定められました。

●「電車に手をふる」「70歳代を高齢者と言わない」

特産品の普及以外にも、まちづくりを進めるための条例があります。

豪雪で知られる秋田県横手市には、「雪となかよく暮らす条例」が定められています。条例では、「全国でも指折りの雪の多いまち」という横手市で、自然の恵みとして雪を積極的に受け入れ、魅力ある雪国をつくることが目的だそうです。

全国に先駆けて、新たな制度をつくった町もあります。情報公開制度は、山形県金山町が1982年、日本で初めて制定しました。国の情報公開法の施行は2001年ですので、それよりも約20年も早く定められたことになります。

福島県只見町や新潟県魚沼市などは、電車に手を振って訪れた人をもてなそうとする「只見町只見線にみんなで手をふろう条例」をもうけています。只見線とは、福島県と新潟県をつなぐ路線で、「地域住民の只見線に対する愛着を深め、力強く走る只見線を応援することを目的」としています。

市民の健康を推進してきた神奈川県大和市は、「70歳代を高齢者と言わない都市宣言」をしています。もともと大和市では「60歳代を高齢者と言わない都市宣言」をしていましたが、「人生100年時代」を迎えるにあたり、新たに宣言しています。大和市は「認知症1万人時代条例」も制定しており、認知症の人が地域で尊厳を保ちながら、人々と共生することを掲げています。

また、地域の歴史を感じさせる条例もあります。京都府福知山市には「福知山市鬼文化研究所条例」が制定されています。酒呑童子などの鬼伝説がある福知山市は、「鬼のまち」を標榜しています。そうした中、この条例では、鬼文化の調査や個性ある地域文化の創造を目的とした、鬼文化研究所の設置を定めています。

パリオリンピックの卓球日本代表で、女子団体で銀メダルを獲得した早田ひな選手が最近、、「鹿児島の特攻資料館」について語って注目を集めました。特攻隊に関する施設があるまちの一つが、鹿児島県南九州市です。市内には「知覧特攻平和会館」があり、南九州市は特攻という人類史上ない作戦によって多くの若者の命が失われた歴史を忘れないよう、「平和を語り継ぐ都市宣言」をしています。

●憲法92条にある「地方自治の本旨」

地方自治体のユニークな条例はまだまだあります。一見、好き勝手に設置されているように見えますが、地方自治体が設置する条例は、日本国憲法92条によって、「地方自治の本旨」に基づかなければならないこととされています。この機会に、地元や自分の暮らすまちの条例に目を通してみるのはいかがでしょうか?

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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