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AV被害防止法が成立、支援団体「貴重な一歩となった」 元女優・小室友里さんも評価
記者会見の様子(2022年6月15日/弁護士ドットコム撮影)

AV被害防止法が成立、支援団体「貴重な一歩となった」 元女優・小室友里さんも評価

アダルトビデオ出演被害の防止や救済を目的とした法律が6月15日、参院本会議で可決、成立した。この問題を訴えつづけてきた団体からは「被害者を救うにあたって非常に有効」と評価する声があがった。また、元AV女優も「AV業界の他力本願体質を抜本的に改革してくれる」と期待を寄せている。

●厳しい罰則も設けられた

民法改正にともなって、この春から成人年齢が18歳に引き下げられたことで、18歳・19歳が「未成年取消権」を使えなくなった。これによって、いわゆる「AV出演被害」の拡大が懸念されて、与野党の超党派による議員立法に向けた協議がすすんでいた。

主な内容は(1)性行為の強要禁止、(2)事業者に詳細な説明と契約交付を義務付ける、(3)撮影は契約から1カ月、公表は撮影終了から4カ月の期間をおく(4)公表から1年間(施行から2年間は2年間)、無条件で解除可能ーーなど。年齢・性別は問わない。

また、事業者が契約解除を妨げるために、出演者に不実告知したり、威圧で困惑させた場合、3年以下の懲役または300万円以下(法人には1億円以下)の罰金となる条文も設けられた。

●塩村文夏議員「業界をつぶそうという思いでやってない」

AV出演被害をめぐっては、NPO法人ヒューマンライツ・ナウ(HRN)が2016年3月、調査報告書を公表して、社会問題化していたが、翌3月の政府の緊急対策は、広報・啓発活動などにとどまっていた。

この日の成立後、HRNなど被害者支援に取り組んできた団体が東京・永田町で記者会見を開いた。HRNの伊藤和子弁護士は「これまで、救済手段がなかった地獄のような状況からすれば、ほんとうに貴重な一歩となる法的手段を実現することができた」と評価した。

協議にたずさわった塩村文夏参院議員は「私自身もこれまでの仕事の中で、芸能界に身をおいたことがあり、実は何人もの知り合いが被害にあっている。ひっそりとこの世界を離れて、人の少ないところに住んでいる子や、一切連絡の取れなくなった子もいる。なんとかしないといけないという思いで取り組んだ」と述べた。

そのうえで、塩村議員は「かなり強い効果のある法律となっている。ここが誤って伝わっていることは、取り組んだものとして、痛恨のきわみと言わざるをえない」「業界をつぶそうという思いでやっているのではない。業界の適正化を目的としている」と強調した。

●小室友里さん「他力本願体質を抜本的に改革してくれる」

この日の記者会見では、元人気AV女優の小室友里さんの次のようなコメントも発表された。

「20数年間、少し離れたところからAV業界を静観してきましたが、内包する人権問題に対し、自分ごとにならないAV業界の他力本願体質を抜本的に改革してくれる法案だと思います。

20数年前のAV女優には、性行為をする、しないの選択権が与えられていました。それがモザイク技術の発達と顧客への過剰サービスにより『性行為はして当たり前』のものとなりました。これは女性への性的搾取、そしてAV女優が業界を離れた後も、自尊心を持って生き続ける権利の搾取だと考えます。

私はこの度の法案で、意に反する性行為はしてはならない、騙したりしてはいけないと明記されたことがとても嬉しかったです。

契約から撮影、販売までかなりの時間を要すること、発売後、当面2年間の無条件回収など、AVメーカーにとっては死活問題以上の条件を突きつけられているものだと思います。

しかし、前出の通り、少し離れたところからAV業界を静観してきた元AV女優としては、ここまで追い込まれないと自分ごとにできなかった悪しき体質こそが、今回の法案を『作らせてしまった』原因でもあるとみています。

それでも海外を見ればAVは『裏クールJAPAN』などと称されることもあり、多くのファンがいます。この場でこのようなことをお伝えすることが正しいかわかりませんが、AVは日本の一文化として認識されていることはれっきとした事実なのです。

文化であるならば、誰かが苦しんだり、泣いたり、人生を脅かされるものであってはならないと強く思うのです。

今回の法案は『被害者救済』のための法案ですから、今、ご出演なさっている方々へのものではないとはいえ、いわゆる当事者意識を持つ現役AV出演者様にとっては、非常に受け入れ難いものとも思います。

将来の課題となった公表期間、本番行為の問題など、まるで自分達ばかりが責め立てられているようにお感じのことでしょう。

今回の法案で『私たちは出演したくてやっている、プライドがある』と奮起されるのであれば、今回の法案をもって『日本の文化として、正しいルール(法)のもと、誰かが悲しむことなく、出演している間も、主演しなくなった後も笑って生きている』AVとは、AV出演のあり方とはなにか、考えていただきたいと思います。

不平でも不満でも、言いたいこと伝えたいことがあれば、インターネットの中で発信するのではなく、しかるべき場所で、しかるべき人たちに向け、ご自身の声で、伝わるように発信していく。

つまり、『自分ごと』にする。それが、これまで無法地帯だったAV業界に携わる人間の全員がこれから持つべき、プライドと呼べるものではないでしょうか。

『そんなことはできない』とおっしゃる方もいるでしょう。諦めるなら、AVへの関わり方がそれまでだったということです。

自分たちの世界(ビジネス)を脅かされると感じるなら、明るい法のもと、AVに出演する側と、それを見る側の人たちと、これから一緒に考え、変化させ、誰もが『これならAVも悪くないよね』と言ってもらえるAV業界を目指していただきたいと思います。

3月に議員のみなさまの前で『未成年者取消権消失による真の被害は、20年後に家族や子どもができてから、その重大さを知る』ことをお伝えさせていただき、私のような元AV女優というバックボーンを持つ人間でも、きちんと向き合い、真摯に耳を傾けてくださる方がいるんだと、心から感銘を覚えました。

とはいえ、問題は残っています。過去の契約書がないまま、二次利用、三次利用されているAVに関する問題は、まさに私も当事者です。

1981年にAVが初めて作られて以降、今日まで引きずってきた問題にも目を向け、これからも取り組んでいただければ幸いです」

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