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弁護士のChatGPT活用法、プロンプトへの理解が大切 西野良和氏が講演
画像はイメージです(Supatman / PIXTA)

弁護士のChatGPT活用法、プロンプトへの理解が大切 西野良和氏が講演

AI技術の急速な進化を受けて、仕事にどう活用するかの試行錯誤が始まっている。産業医でつくる一般社団法人産業医アドバンスト研修会(JOHTA)では5月16日、「AIは産業保健の敵か味方か?」をテーマに活用例などを共有するセミナーが開催された。

講師を務めたのは、社労士でもある西野良和弁護士(法律事務所Z)。ChatGPTに文書の骨組みや業務効率化のためのコードを書いてもらったり、NotionAIで社労士関連業務について、必要なタスクの洗い出しをしたりと、AIを仕事に積極活用しているという。

そんな西野弁護士が高く評価するのが、「ChatPDF」というツール。PDFの中身を要約してくれるというもので、役所などの難解な通達も要約し、PDFに関する質問をすれば、回答しPDFの該当ページを教えてくれるという。

「未来の本の読み方。小説は頭から読んでいくとしても、専門的な情報は頭から最後まで読んでいくのではなく、本と対話しながら必要な情報を取得する時代が来ている」(西野弁護士)

かなり近い将来、複数の本を同時に読ませて、「これらの本をベースに最新情報を優先して回答」といった複雑な処理ができるという。

西野良和弁護士 西野良和弁護士

●「AIは敵にはなりえない」

AIの急速な発展スピードを受け、西野弁護士は次のように語る。

「これまでは問題解決能力を問われていたが、それはChatGPTができるようになってきた。今後は、何が問題なのか、世の中にどんな問題があるのかを考える力。問題設定力が大事であり、好奇心が重要になる」

また、現時点でのAIは、人間の指示に従って回答を出すシステムであるため、指示をする人間自体の人間性や倫理観が重要になってくるという。

たとえば、経営者がチャット型AIに対し、従業員に文句を言わせず長時間労働させるためにはどんな施策が考えられるか投げかければ、AIはこれに対する回答を出してくれる。しかし、社労士や産業医、あるいは弁護士には適切な問題意識、倫理観を持って、それに歯止めをかけていくことが求められる。

将棋の世界ではAIで仕事が奪われるどころか、AIを使った研究が盛んになっている。西野弁護士は「AIは敵にはなりえない」として、AIに代替されない人間性や創造性を磨き、適切に活用する必要があると訴える。

●ChatGPTをカウンセラーとして使ってみる

ChatGPTなどをうまく活用するには、プロンプト(命令)への理解が大切だ。西野弁護士は一例として、ChatGPTを簡易なカウンセリングに使う場合のプロンプトを説明する。

ChatGPTに、ただ「カウンセラーとして回答してください」とだけお願いすると、読むのがしんどくなるような長文の回答が出力されるため、このままだとなかなか実用には耐えない。

しかし、「優秀なカウンセラーとして回答してください」として、「解決志向ブリーフセラピー(短期療法)を意識してください」、「すぐに答えを出そうとせず、十分に傾聴してください」、「共感的な態度を示し、勇気づけを行なってください」などの条件を加えると、目に見えて回答が違ってくる。

たとえば、ChatGPTが「それは大変ですね」、「どういう状況で、ストレスを感じるか、もう少し詳しく教えていただけますか」などと、共感を示したり、深掘りをしてくれたりするので、AIとのコミュニケーションが続いていくという。

ただ、この話にはオチがある。カウンセリングでは、相手が言った言葉を繰り返す「おうむ返し」というコミュニケーション技術が使われることがあるが、西野弁護士が紹介したプロンプトではChatGPTもこれを多用する。おうむ返しは、実際のカウンセラーがやった場合も、人によっては不評を買うことがあるそうなのだが、文字になるとより「うざさ」が増してしまう可能性があるというのだ。

とはいえ、この辺りの精度は今後さらに上がっていくと考えられる。音声入力・出力などと組み合わせれば、自然なコミュニケーションが実現する可能性があり、しかもAIならベトナムやタイ語などにも対応できる。

アイデアひとつで、AIはさまざまな可能性を秘めている。西野弁護士は、「個で集められる情報には限界があるので、コミュニティの中で情報共有していく時代になるのではないか」と述べ、グループでの学習会などの重要性を指摘した。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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