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出かけたプールで撮影された「娘の水着写真」を知人が勝手にネットで公開…「娘はショックで泣いています」
写真はイメージで本文とは関係ありません(Taka / PIXTA)

出かけたプールで撮影された「娘の水着写真」を知人が勝手にネットで公開…「娘はショックで泣いています」

「ネットに子どもの水着写真が無断でアップされていました」

弁護士ドットコムには、「SNSに子どもの写真が無断で掲載されてしまいました」といった相談が複数、寄せられています。

ある相談者は、娘を連れて複数の家族でプールに出かけ、子どもたちの集合写真を撮影したところ、知り合いの妻が自分のブログにその写真を掲載したそうです。

「子どもの水着の写真が勝手に出回ることが非常に嫌ですし、危険を感じます」と相談者は懸念しています。子どもは水着の写真が公開されていることにショックを受け、泣いているとのことです。

また、別の相談者も自分の子どもの写真を、知人が無断でブログにアップしてしまったと悩んでいます。掲載されていることに気づいた時には、閲覧数が5000件を超えていたそうです。投稿には、リアルタイムの居場所まで書かれていました。

相談者は知人に、「子どもの顔写真をネットで公開するのは危ないからやめてほしい」とメールや電話で依頼しましたが、無視されたため、ブログのコメントに書き込んだところ、やっと削除されたとのことです。

こうしたネットのトラブル、親はどう対処したらよいのでしょうか。子どものトラブルに詳しい髙橋知典弁護士に聞いた。

●子どもの写真をネットで公開すると危険?

——子どもの顔写真や水着写真、出かけていた場所などをネットで公開することは、どう危険なのでしょうか。

ネット上に掲載される以上、不特定多数の人の目に触れることがリスクです。

撮影行為自体が身内によってなされているために、被写体になっている子どもたちも油断していたり、知らない人では立ち入れない至近距離からの撮影になっている可能性があり無防備です。

また、写真に含まれる「いつどこにいたか」という情報は、子どもの生活環境を推測させます。

さらに、水着写真は、ネット上で性的な目で見られていたり、売買の対象になるものや、写っている子供を特定しようとする事案にまで発展する場合もあります。

加えて今後は、AIが進化していく中で、これまでは散発的に発信され、バラバラなままだった情報が、AIによる画像検索によって複数の画像が人物特定されて検索が行われ、結果的に写真を繋ぎ合わせると、その子どもの個人情報を過去にさかのぼって簡単に知ることができる状況にもなっていくでしょう。そうすると、子どもがさまざまな犯罪に巻き込まれる可能性が高くなります。

また、仮に今は大丈夫でも、子どもが成長して大人になった時には恥ずかしいと感じたり、ストーカーに利用されてしまうかもしれません。今後、その子にとってはリスクになってしまう危険さえあります。

●「撮影はOKしてるんだから」許される?

——相談のケースでは、投稿者と連絡が取れたために削除してもらえましたが、もし応じてもらえなかった場合、どのような手続きをとればよいのでしょうか。

プライバシー権や肖像権といった権利を侵害する投稿については、SNSの管理者に対し削除要請を行ったり、裁判所に削除の仮処分申立て等を行うとよいでしょう。困っている場合には、弁護士に相談されることをお勧めします。

もっとも、今回の事例のような困った友人だと、「撮影」は本人も承諾しているのだからいいじゃないかといった反論が来るかもしれません。

実際に、投稿された本人が嫌だと思っていても、プライバシー権や肖像権といった権利侵害がないならば、SNSの管理者や裁判所へ要請しても、消してもらえない可能性があります。

●プライバシーの侵害、どう判断?

——「権利侵害がない」と判断されてしまうこともあるのですね。

今回のような事案について、検討してみると、プライベートな写真が公表されプライバシー権や肖像権といった権利侵害の有無が問題となった過去の裁判事例で、裁判所は、簡単にまとめると、プライバシーの侵害について以下のような事情を検討しました。

例えば、公表された写真が、(1)私生活上の事柄かどうか、(2)一般人の感性で公開されたくない情報かどうか、(3)既に一般に知られているものかどうか、(4)被害者が公表によって不安を感じるかどうか、といった事情です。

こうした事情に加えて、肖像権については、(5)写真を「公表」することに被害者が同意していたか、(6)被害者が有名人で公表することに公益性等があるか、といった検討を通じて、権利侵害の有無を判断しています。

今回の相談では、友人家族と一緒に行ったプールでの水着写真は、(1)私生活上の事柄ですし、(3)他の人に知られていることもなさそうです。(2)写真次第になるでしょうが、一般人の感性でも、特に子供の水着写真の公開はされたくないものが多いでしょう。

(4)これも写真次第ではありますが、被害者が公表によって、事件に巻き込まれたり、知らない大人の視線が子供に集まることを不安に思うのも当然でしょう。

加えて、今回の相談では、(5)「写真撮影」には同意していても、「SNSでの公表」に同意はありませんし、(6)このような相談をされる多くの方は、有名人ではなく、一般の方でしょうから、公表に公益性等があるとも思えません。

このように見てくると、もちろん写真の内容次第ではあるものの、ご相談にあるような子供の水着写真を勝手にSNSに投稿することは、権利侵害に該当して、削除できる可能性がある写真です。

●勝手に投稿した人に損害賠償請求できる?

——相談者たちは、投稿者に損害賠償を請求したいと考えているそうです。

「謝罪を求めることは法律上の要求とはあまり馴染みませんが、人間関係上の要求としては自然なものだと思います。 他方で、仮にプライバシー権や肖像権といった権利の侵害があるのであれば、民法上の不法行為のため、損害賠償請求は可能です。

もっとも、裁判例でも損害賠償額は事案によって大きく異なり、プライバシー権侵害があるとされた事案でも、損害賠償額は、数千円のものから100万円を超えるものまで様々です。実害としてどのようなものがあったかでも金額は大きく変わるため、もし損害賠償を検討する場合には、金額については弁護士にご相談なさった方がよいでしょう。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

高橋 知典
高橋 知典(たかはし とものり)弁護士 レイ法律事務所
第二東京弁護士会所属。学校・子どものトラブルについて多くの相談、解決実績を有する。TBS『グッとラック!』元レギュラーコメンテーター。教育シンポジウム、テレビ・ラジオ等の出演。Yahoo!公式コメンテーター。

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